「キャプテン・ハーロック」に見る日本の危機

松本零士氏の「宇宙海賊キャプテン・ハーロック」は、人類が無気力化した未来（1000年後）が舞台です。怠惰に平和を貪るだけの人類の姿は、いうまでもなく、高度経済成長の夢に溺れて、気力も危機感も失ってしまった「平和ボケ」日本人への、強烈な皮肉であり、また警告であったことと思います。

「ハーロック」は、原作の漫画発表から１年程の後、テレビ・アニメ化されます。ところが、その第１話の中で、舞台背景の説明として、こんなナレーションが入ります。「地球連邦政府は、反乱を恐れ、催眠音波の混ざった映像を流し、人々の気力を奪った」

なんてつまらない改編をするんだ，と思いました。これでは、悪いのは全て地球政府で、国民はただの被害者です。ハーロックが放送局を破壊すれば済んでしまう話だし、当の地球政府要人達まで無気力なのも変です。何より、平和ボケした日本人への警告という原作の趣旨が、見事にスポイルされてしまっています。

脚本はあの上原正三氏です。全体的なストーリーや設定の方でも、大きく上原流のメスが入り、物議を醸していたため、特にこのくだりが当時のアニメ雑誌等で話題になった記憶はありませんが（そんなに雑誌を読んでたわけでもない）、悲惨な沖縄戦を直に体験した人だけに、或いは「平和ボケ」という概念に同意できなかったのかもしれません。

しかし、最近のテレビをみていると、あの脚本もそれなりに鋭かったのかな、と思うことがあります。こんなものばかり見ていて、日本人はどうなってしまうのか。つまらない音や映像に洗われて、日本人の脳はどんどん溶けていっているのではないか。そして、もしかしたら、そこには、自分たちの地位の安定のために、国民の知性の低下を嬉々として歓迎し、加速させようとする、為政者達の意図がありはすまいか？

いやいや、あるいは、日本国民を草の根レベルで洗脳し、換骨奪胎して、いずれ外交的・軍事的圧力のもとにこの国を踏み潰してしまおうとする、近隣某国の陰謀かもしれないぞ。そういえば、「ハーロック」の原作にも、地球人の無気力化は、マゾーンの意図的な操作の結果なのではないかという疑問がつぶやかれたことがあったし・・・

(1999.1.20)

その他のたわごとへ｜おなみどらっがーへ
メールはこちらまで｜Mail to here